19921218

考えていることをつらつら書きます。

幻影

好きな男がいる。

その男には、顔が無くて、

わかっているのは

彼の身長が178センチメートルということだけ。

 

初めて会ったのは、二年前、

ただただ白いだけの空間で、

彼と私は二人並んで歩いていた。

会話を交わすこともなく、

ただただひたすら終わりの見えない道を

二人で歩いていた。

二人の距離は30センチメートル。

彼の手と私の手は時折触れ合い、

彼の体温が空気を伝わってくる。

手をつなぐのかつながないのか

もどかしくてもどかしくて

でも、手をつなげないことが

幸せで仕方なかった。

 

そして、一か月前、彼は再び私の前に姿を現した。

彼と私は灰色の海にいた。

その日は曇りで、時折吹く風は生温くて、

肌にまとわりついてくる。

景色が色を失う中で、砂浜のみがその色を残していた。

彼と私は、裾をまくり、海のほうへと歩き出した。

生暖かい風とは対照的に、

海はつめたかった。

太陽は消えていた。光が消えていた。色が消えていた。

荒廃した景色の中で、

私と彼は、温度だけを感じ取っていた。

 

 

彼は何者であろうか、次はいつ会えるのであろうか。

 

私は彼に恋をしている。